ほんとに今更だけど。


もう、いい加減事態も沈静化して、文脈だの関係性だのといった状況を鑑みて発言する必要もなくなったと思うから言っちゃうけど、件の揉め事ぽい何かで皆がつついた例のセンテンスなんだけど、はじめ読んだとき少し妙だなと思ったことがあって、こういう発想する人が一定数以上いること、それが一つの規範価値として強制力を伴って意識に浸透していること、それからそうした傾向が育む倒錯に極めて無自覚であること、とかそういうのは全部予め了解はできるんだけど、それでも何だって最終的に資源を如何にして増やすかという話に行かないのかしらね。だって、元々の手元の資本金が非常に少ないとして出来ることが限られているから効率的に投資していくって発想は理にかなってるとしても、そもそも効率的な投資の果てに資本が増大しないのなら何の経済活動なんでございましょう?「ユー達ボンクラどものお先真っ暗な未来と残酷無慈悲な世の中の仕組みをその頭に叩き込んで、上手く立ち回って頂くがミーの講義の要ざんす。ミーの話をよく聞いた良い子には高評価とハッピーライフが待ってるざんすよ」とか甘言を弄さないと教えることにはならないんじゃないのー?みたいな。そら、あなた、救済が無いんじゃ誰が好き好んで牧師の説教だの坊主の説法だのを聞きますかね。まあ、いるけどな、そういう宗教家。しかし、救済論やら終末論が下らないとしても、救済のない宗教って単なる抑圧の内面化を強制するための方便でしかないじゃないですか。ましてや実学ともあろう学問分野が単なる必然性と事実のみに由来していて、それをいかに使うか――そして、またそのような技術によってどのくらい利潤を増やしていくかを教えてくれないのなら、それは存在理由を否定してませんか。


まあ、講義という性質上、限られた時間配分ということで何処に重点を置くかという問題は常にあるにしても、ボンクラだと見なしている相手を調伏するのに、相手が反発するはずの地点から始めるのは殆ど無意味なカミカゼアタックとしか思えないわけで、単なる感情的な葛藤を他人に投影したかっただけなんちゃう?とか、まあ、思ったり思わなかったり。


うん、ていうか、経営学なら先ず「こうすれば金が儲かる!」的な話から入るべきだと思うよ。だって、どうせ煽りなんだから。というか、そうでないならホントに何のための実学なのか分かりません。耐え忍ぶとか、シノギのやり方みたいな最初からマイナスでマイナスをさらに減らさない努力みたいな話なら聞く必要ないじゃん。テキトーに楽して生きる方法とか、汗水たらして資本を拡大再生産していく方法とか、皆そういうのが聞きたいと思うよ。あとはブルジョワ子弟にはむしろ金を供出させるよう仕向けるとか。


でも、そうすると大半の人文諸学はどうやって学生にアジテートすればいいのかしら。心理学は昔から人気があるからまあ良いとして、シャカイガクとかは言われなくても病気の人たちが集まるし、史学とか文学とか哲学はどうすれば良いのやら。史学はでも、戦記とか軍事史とかを般教でバラまいとけばいいか。戦争とか革命とか動乱とか面白がる人は一定数居ると思うよ。あとは原書房的に愛の歴史とか。文学は、そうねえ、語学と絡めて、外国人とのビジネスにおける教養とかそういう話にすれば…弱いなあ。小説は面白みがないし、評論なんか何も役に立たないし、創作の技術論とか修辞学なんざもっと層を狭めることになるだろうしなあ。あ、作者に関する下世話な話とかはいいかもね。スキャンダリズムとワイドショー性を一般教養レベルで垂れ流すの。昔の作家のラブレターと事の顛末を毎回教えていくとか。あとはねえ、割と地味に小説というかフィクションの歴史を博物学的に教えていくとか。大事なことは、文学の場合、自律的で閉鎖的な学知を他の様々な現在の社会的・文化的な空間と繋げておくことじゃないかな。あるいはそれは卑俗さとの接合でもいいんだけど、例えばオッサン小説家の文章からオヤジ的感性について繋げていくとかでもいいわけだし、或いは台本と演出の関係みたいな多少心得のある人間にしか面白くないテーマだとしても、毎回娯楽映画見せる時間を作れば寄って来る人もいるだろうし――まあ、どれも俺が思いつくくらいだから、プロの講師陣はそんなこともう実践済みなんだろうけど。それ自体が好きって人は放っておいても読むわけだから、一般教養の餌が重要なんだろうね。あ、哲学は無理だよ、どっちにしろ。だって、変人しか出来ないじゃない、あれ。タイプ付きラムダ式の論理構造とか言われても意味が分かりませんよ。そして、この論理式の意味空間は存在しており、我々の思考がそれを可能にするのではなく、むしろこのような意味空間こそが我々に対して真実に在ると言われなければならないとかどんな呪文だよ。まあ、面白いんだけど半分も分かりませんよ。あとは、あれでしょう。超越論的現象学とか何か必殺技みたいな観念が頻繁に飛び交ってて最終的には郵便物が怖くて幽霊を見たりするんでしょう。もう、さっぱりですよ。