ちらしの裏旅行記その一。

さて、何から話したものかしらね。先ずサミットって何?って人に解説したいんだけど、俺も詳しいわけではないのよね。まあ、金持ちどもの番人たる国家の糞ったれ指導者とかお偉い人たちが薄暗い所でゴソゴソやってらしいよ。で、自分たちの利害関心に基づいて様々な協定をしたり、今後の協調体制とその方針を検討するんだってさ。何が問題かって?その内容というか決めごとそれ自体が議会による審査を経ていないとか、大国の都合でこれからの経済の方向とか決めちゃって、貧乏な国は一方的に押し付けられるとか、国内に向けても貧乏人の得になることは何一つしてくれないとか、要するに議会だの野党だの或いは民衆でも人民でも何でもいいけど、要するに民主主義的建前にとっては不可欠の権力への監視が届かないところで好き勝手に世界の行方を決めるなんて認められるわけないじゃない?だって、俺の人生に無理やりにでも介入してくるような制度とか体制とかを作ってるけど、俺そこに何も発言権ないし、元々無いけど文句言わないと黙って通り過ぎていくならまだしも、身ぐるみ剥がされるのは嫌だよ。気に食わないよ!


そんな感じ?まあ、穏健なところでは必要な圧力をかけましょうって奴だし、過激な部分は世界の不正を体現している象徴的な会合だから攻撃しようってとこじゃないのかな。あとで、調べてみるよ。でも、調べ物ってどんどん時間ばっか食ってくからどっかで決めなきゃいけない。それで、5月くらいには行こうかなと思ってたんだけど、仕事は相変わらず忙しくはないもの時間的には不安定で、突然2〜3日動けない仕事とか来ることもあるしで、正直微妙な感じ。それでも、まあ情報集めようかしらと思って五月末だったかな――覚えてないけど――新宿にある怪しげなお店・IRA*1に行ってみた。店内には古本から雑誌・ミニコミ誌・バッジ類とかステッカー・ポスター、レコードや自主制作のアルバム、それにコーヒー豆まで雑多な品揃えで、模索舎をもっとDIY寄りにした感じ?良く分からないけど、楽しげなお店だから、興味がある人は行ってみるといいかもしれない。それで、何をどう間違えたのか、髭の店長さん(?)にブラックブロックとか載ってる雑誌ないですかと頓珍漢なことを聞く。でも、親切にあれこれ教えてくれて、お陰で愉快な雑誌を買って大満足――いや、違う。違うよ。俺はそんなことのために来たんじゃないよ。反G8だよ、目的は――というわけで、ビラ類を貰って帰る。でも、行きたくても時間的に微妙なイベントが多くて結局行けずじまいで、どんどんテンションが下がる梅雨時を過ごす。


そんなこんなで六月の終わり近くまでグズグズしてたけど、職場で前述の雑誌を読んでいても大して気にも留められない環境なのを良いことに、上司に七月の頭に休みを貰いたい旨要求する。理由を聞かれて、馬鹿正直にデモに行くと言ったら「ご勝手に」とのお返事。理解があるのかないのかさっぱり分からないけど、とりあえず会社休めるみたいだし、まあ、いいや。だけど、ウェブ上だと中々情報が出てこなくて、宿泊施設は一杯だし、飛行機もなくなるし、お金も浪費癖でどんどん減るしで、結構微妙な六月終わりにもう一度IRAに行く。何か、お店の人と知り合いの人たちが盛り上がってて、ブラックブロックな人たちも入国しているらしいとかで結構期待が高まって、思い切って行くことにする。問題はこの時点で薄々感じていたのだけれども、デモとか集会ってのはツテもなく参加すると微妙に居心地がわるいというか、居場所がないことが往々にしてあって、そもそも俺は大学時代の緩々でいい加減な繋がりでしか参加したことがないので、今回は誰も知らない場所に物見遊山感覚で出かけるわけで、果たしていいのかしらと思うも、とはいえ、実際問題、フルタイム(?)の仕事してたらストレスたまるし、学生時代よりも参加の意思は強くなってきていたし、なにより結局始める時はいつでも自分で決めなくちゃ仕方ないので、どうでもいいから行くだけ行こうと無理やり飛行機を探して、金曜日の昼にたつことを決定。


空港はそれほど警備が厳重というわけでもなかったけど、私服っぽい奴がちらほらしていて何やらものものしい雰囲気が醸し出されていて、とっとと立ち去る。しかし、想像していたよりずっと暖かい。というか、暑い。


そして、一番の問題は、何も考えないで飛び出してきたので、札幌まで来たはいいが、泊まる場所がない。昔から予定が立てられない人間でした。野宿も検討したけれども、まるで知らない土地で初日から野宿というのもかなり微妙だし、ポリ公もウロチョロしてるし、そうじゃなくても俺は普段からなぜか職質にあいやすいし、面が悪いと友達はみんな言うけど、それは貴方偏見ですよと言い返すも、良く考えてみたらオマワリの仕事は偏見しか存在しないし、どうでもいいけどいい加減疲れたから、どっか屋根のあるところで寝たい。公園のトイレには例にとって市役所の警告文が書いてあるし。ああ、そういや、インフォメーションセンターがあったと思いだす。住所と大まかな地図を一瞥して歩きだすも、方向音痴のワタクシ様は何故か虎のあなとかゲーマーズとかにはぶつかっても、目的地へ近づいた気配が一向にしない。というか、俺は今どこを歩いているんだ。札幌の街は碁盤目みたいに綺麗に分けられていて、本来は分かりの良い街のはずなんだろうけど、まるで土地勘は働かないし、そもそも前日から寝てないから行動に脈絡がなくて、結局一旦ドトールに退避して、自分の現在地と目的地を地図で把握する


それで、札幌市から離れた所にキャンプがあるらしいのは知っていたのだけれども、俺みたいのが果たして行っていいのかしら――いや、良い悪いという話ではなく、そもそもそんな場所にいって居場所あるのかな、というやつね――真面目に活動している人とか、それなりにツテがあって一定の関係性を持っている人とか、まあ、誰とでも適当に仲良くなれる人とか、いずれにせよ問題意識も高そうだし、なーんか空気読めずに行って居心地悪い思いするのも嫌だなーとか考えたけれども、宿も取れないし、まあ、行こうかな――くらいのいい加減な気持ちでコンバージェンスセンターへ。


たどり着いたのは八時近く。しかも、勘違いしていたことにキャンプ地へのバスが出るのは札幌からではなく、石狩当別駅から。でも、札幌からJRに乗って3、40分程度でつくようだし、まあ、まだ時間的には間に合いそうだし、じゃあ、一休みして行こうかと思っていると、何だか見知らぬ人が親切にも十時くらいに来れば、車に乗っけてあげてもいいといわれる。


で、九時半くらいに戻る。さっきの人がいないので事情を説明する。考えてみると、図々しい話だなと思い、何か手伝っておけば運賃分くらいにはなるかしらと思うも、素人だし他人なので何をすればいいのかも分からないね。うーん。バルーンに絵を描いたり、横断幕っぽいのを作ったりしている人たちがいたので、そこに加わってバルーンに絵をかく。自分の落書きスキルのなさにぶつかり、筆を持ったまま止まる。適当にAの字を描いてみたりする。反省。即興的なパフォーマンスができる程度にはお絵かき能力がほしい。上手い下手ではなくて、その場で思ったことを手で描くという作業ができないのはいろいろと問題。


そんなこんなで何やら戻ってきた人にくっついてキャンプ場へ。が、ここで最初のアクシデント。車に乗るメンバー――俺以外は全員、実行委員にかかわっている人たちっぽい――の中に、以前、仕事で会ったことのある人がいてビビる。向こうとこちらの間にすごく微妙な空気が発生する。仕事も仕事だし、何だかアレだ。まあ、そんなわけで車中は相当居心地が悪い。だって、他の人たちはみんな知りあいだけど、俺だけ見知らぬ人で、しかも、格好が何を勘違いしたのかアロハシャツ着てたりするし、胡散臭いにもほどがあるよ!


一時間くらいでキャンプ場につく。廃校を借りて、みんなでキャンプしている。でも、人の気配はあまりしない。もう寝てるのかしらと思ったら、皆、体育館で色々と話し合いをしている様子。面白そうだから輪の中に加われないまでも、何か首を突っ込んでみよう。と思ったら携帯が鳴りやがる。誰だよ、こんな時間に。とか悪態をつくものの、すっかり疎遠になっていた友達からなので出ないわけにもいかず、しかも色々と微妙な話をされて長話に。それで、電池が切れて戻ったら、話し合いも終わってて俺は一体何をしに来たんだ感に打ちのめされる。つまんない!


気を取り直して、そこらにいる人に色々と聞いてみたら、別に全体のコンセンサスがとれたわけではないとの答えで、各自バラバラというかそれぞれのブロックで集まって行動するみたい。どんなブロックがあるのかもよく分からないし、今更参加もできないので、まあ、明日は一人で好き勝手にウロウロしようかなとも思ったんだけど、オマワリ対策というか現地での行動に際しての防衛ってどうなってんのかしらと思い、手近にいた人に話しかける。うーん、典型的な空気の読めない人な感じ。なんだか、関係者と勘違いされたのか活動家っぽい人のところに案内されたので、まあ、素人考えを適当に話す。真面目な人なのか、訳の分からないよそ者の話を聞いてくれて、そこまではいいのだけれども、なぜか話が俺の知りたいことではない方向へと進んで、さらにほかの人との話し合いに進んでいき、そもそも部外者の俺がそんな話に立ちいっていいのか非常に微妙だし、実際、話すこともないので手持無沙汰になってしまう。で、その辺りでハタと気づいたことはよくよく考えてみれば当たり前の話で、事前に何か全体の決定とか統括があるわけではなくてその場その場で作り上げていく形になっているらしく、皆知っていることも知らないこともそれぞれにバラバラ。そういうものかと思いつつ、一応怖いので話を聞いてくれた活動家っぽい人に隊列の仲間がパクられそうになったりした時とかどうすんの?と心得を聞く。その場の状況次第とのお答。そりゃ、まあそうだ。


うーん。ここまで書いて気づいたというか、再確認したんだけど、俺何もしてないな。そして、皆の不安通り、この後もずっとこんな感じ。とにかく、俺は無駄というか無意味な行動が多すぎ。後、今回凄く痛感したのは労働なんて自分の外にあって、無理やり付き合ってる気でいたんだけど、労働の仕方というか職場での適応の仕方というのは知らず知らずのうちに身体化されるらしくて、非常に良くない振る舞いをしたように思う。まあ、平たくいうと詮索好きというかお喋りというか、無駄話と内輪話でダラダラ会話をするというのがワタクシ様の職場のやり方で、それは会社全体というわけでもないけれども、少なくとも僕のいる班の人たちがそういうタイプで適当に合わせているうちに移ってしまったようで、これについては自分に猛省を促したい。労働って怖いとつくづく思いましたですよ。まあ、根がいい加減で適当で無駄話が好きという自分の本性のが強い気もしますけど、そこは適当にアリバイ作っておかないとね。


というか、特に何かがあるわけではないので五日のことだけ書けば十分な気もするけれども、書いていると色々と振り返って考えることができるのでこれはこれでワタクシ様のためにはなるのです。んなもの他人に見せてどうするんだという意見に対しては、此処は元々チラシの裏ブログですとお答えします。そして、肝心な具体的な中身には触れませんので、本当に他人には何の意味もないですね、これ。


あー、でも書いていると、本当に後悔というか失敗ばっかで気が滅入るね。まあ、俺がリアル電波なのが問題なんでしょうけど。


ま、いいや。それで五日当日だけど、早朝にコンバージェンスセンターに戻るスタッフにくっついて行って又も運賃を浮かす。やってることは只のバックパッカーと変わらない。でも、お金ないし。


さて、朝方に戻ったはいいけれども、デモは午後三時から。知り合いもいないし暇だなあ、と思っていたら、結構な年のおじさんがやってきて、寝袋無いけど何処で買えるとか聞いているので、意味もなくドンキまで案内する。何やってるんだか。下っぱ根性もすっかりこの一年で板についてきたと感じられる午前中でした。案内したお礼におじさんにコーヒーをおごってもらう。でも、藁しべ長者フラグは立ちませんでした。話してみると変な人で、ちょっと警戒する。まあ、委細は省くよ。問題は、色々あったとはいえ、単なるそこいらの人、それも自分から関わった人間を疑う俺の心性――これも反省点。まあ、アナ系からインド系(今考えた。瞑想とかソッチ系)に行ってる時点で相当オモシロな人ではあるんだけれども。


そんなこんなで、おじさんと別れた後、町中をダラダラしながら、昼過ぎくらいにコンバージェンスセンターに戻る。と、これまた妙な――マンガの一コマをバックプリントした――T−シャツを着たおじさんを見つける。駄目オタクアンテナが反応して話しかける。どっかで見たことのある絵柄だと思ったら、某エロ漫画家の人でした。韓国から来た人たちが空港でイチャモンつけられて勾留されたと聞く。どうも日本のポリ公は白人には手を出さないで、弾圧しやすいアジア系を狙っているんじゃないかとかいう話も出る。特に(逮捕者が)サミット参加国の国籍を持ってたりすると後々、問題になるとの憶測があるのではないかと邪推したりして、気分が悪くなったり。あとは全く関係ないけど、貧乏な軍隊マニアというのもミリオタの中にはいて、意外とミリオタ趣味から反戦行く人もいるとか。札幌の街は京都の地図を裏返しにする形で作られているとか。そんなこんなで、色々とトリビアを教えてもらったり。それで、いそいそと集会が行われている公園へ。公園をびっしり取り巻く護送車と乱闘服姿の機動隊員、それに公安のポリ公どもの多さに辟易する。



疲れたので、肝心のデモに関してはまた明日。ていうか、そっちは俺の行動云々より色々と語ったり、考えたりしなければいけないことが盛りだくさんなのでどう纏めるか思案中。大失敗旅行記の体裁で書く方が肩に力入れずに済むんで、そっちの方が個人的には楽なんだけど、少し真面目に考えないといけない事柄もあるので。まあ、機動隊がサウンドカーを包囲するまでは緊張感はあったけど、それなりに楽しいデモだったことは確か。それに一般論としては逮捕者が出る可能性というのは常にある。じゃあ、引っかかってるのは最終的にどこかと言えば、所謂隊列の統制のきかない部分に対する圧倒的なシンパシーというか心理的親和性が一方にあって、でも他方では疲弊している実務の人たちに負担かけたくないなあ、という個人的な心情があって、どうにも煮え切らない行動をとったってことなんですが。あとは、目の前で逮捕されているのに何も出来なかったあの悔しさとかね。そりゃ、自分の身を最優先にすることに疚しさなんか感じないけど、それとこれとは別の話。


つづく。

*1:イレギュラー・リズム・アサイラムの頭文字でIRA。某共和国軍ではない。